カエルほんのめも

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横浜読書会スピンオフ企画『Xの悲劇』に行ってきました

横浜読書会スピンオフ企画『Xの悲劇』に行ってきました。

Xの悲劇 (角川文庫)

Xの悲劇 (角川文庫)

初めに

今回は翻訳家の越前さんが来てくださっての読書会でした。
翻訳家さんが来るといつものように辛口意見もなかなか言いにくいかもしれないなーと、自分の感想を二種類用意して参加しました。
が、横浜読書会はいつのときも皆が言いたいことを言ってくれる!
というわけで、わたしも素直な感想のほうを喋ることができてスッキリ。そのうえで実は……ということを今回の読書会を主催されたタマさん(※横浜読書会ではやりたい読書会をやることができるのです!)が最後にびしっと言ってくださり、目からウロコの読書会でした。ああ、今回も楽しかった。
参加された皆さん、主催してくださったタマさん、幹事さん、そしてゲストできてくださった越前さん、ありがとうございました。

さて、今回はネタバレ必須なため、読んでない方は以下を決して読まないようにしてくださいね。X以外についてのネタバレは行いませんので、とりあえずXのみで判断くださいな。

初クイーン

序盤に感想をおっしゃったかたは、クイーンを読んでないかたが多くて、初クイーンがどうだったかという話を聞けました。
結構評判がよく、Xに続き、他も読みたいとおっしゃるかたが多数。
それを聞きながら、わたしは本当に初クイーンが国名じゃなくて良かったね、と思ってました。国名初は辛かった記憶ばかりなので。
結構好意的な意見が続く中、探偵役レーンがちょっと悪人ではないか説が飛び出ました。

レーン

レーンが良い人ではない、でもだから萌えるのではなどなど、レーン萌えできるかの話に。特にあの日光浴シーン。あんなシーンいるのかと喧々諤々。
すると越前さんが「これから先のシリーズを読むとちゃんと理由がわかります」と。そこから続きを読むべきという話になりました。
クイーンはこのシリーズはちゃんと計算して書いていたんじゃないかという話に感心。わたしはちゃんとXYZ最後の〜まで読んだというのに、ふーん、ぐらいで終わってしまったというのに。
読み直しが必要かも……と思っていたら、越前さんが「11月に仙台で四部作の読書会やる予定ですよ」と情報をくださいました。すっごく商売上手です、越前さん!
また、レーンがどうしてこんなに金持ちなのかという話になりました。
シェイクスピア俳優って儲かるの? この時代はいつごろなの?という話に。確かに執事のいる屋敷を維持できるってどれほどなのかしら?

Xは解けるのか

Xの犯人を解決前にわかるのかという提示がありました。
いつも結構犯人当て得意なかたが「絶対無理」とおっしゃっていたのが印象的でした。わたしも無理ですが、本格読みの読者で凄い人は凄いのを目の当たりにしているのと、クイーンファンはフェアプレイの犯人当てを楽しみにしていると思っているので、解いている人はいると思います。でも、万人が解けるわけではないといわれたら、その通りだと思います。
つまり、フーダニットではなく、ハウダニットなのではないかとおっしゃっているかたがいました。犯人はどうでもよく、それより手がかりを見つけてごらんというのがクイーンではないかとのこと。
そのため、犯人の物語はまったくなく、動機もとってつけたような話だという説明に皆で頷いてました。
別のかたが犯人の物語を読みたかったとおっしゃっていて、なかなか新鮮な意見だなーと聞いてました。わたしはクイーンはパズラーであり、動機なんて二の次と思っていたので、まったく期待してなかったところですが、確かにXの動機はドラマチックかも。クリスティと比較していらっしゃるかたがいて、クリスティに比べるとドラマ性が足りないとおっしゃっていたのですがその通りだと思います。そもそもクリスティとは別物とおっしゃるかたもいて、いろんな見方があって面白いなと思いました。

無理があるのではないか?

コルク玉の話になりました。
コルク玉についている程度ではニコチンの到死量には全然足らないのではないかと調べたかたがいました。確かに足らないそうです。
また、犯人がせっせと変装しているのに誰も気づかないなんてありえないとわたしの感想。レーンが最初の車掌を見てなくても、最後の殺人で守る気でいるならサム警視に言うなりなんなりしてけ、という意見を出しました。
ダイイングメッセージも無理があると言えば無理があるという話に。

レーンはすべてわかっていたのではないか

タマさんが「角川版で282ページでレーンは車掌が後ろに行くのを見守っている、それは彼が犯人であり、すべてを知っていて、行かせたのではないか」とおっしゃいました。「ダイイングメッセージを完成させるために、犯人にすべての犯行を終えさせるチャンスをやるために行かせたのでは?」
それを聞いて、レーンの印象がガラリと変わりました。
これからのシリーズを読んでいくとそういうレーンの印象は強くなるだろう、ただXからそうだったというのは初耳と越前さん。でも、確かにクイーンが計算をして書いていることを考えるなら、それは正しい意見かも!?
レーンはちょっと悪いぐらいではなく、悪人じゃないかという話になりました。
「レーンの本当のところを知るためにも、ぜひ最後まで読んでください」と越前さんはやっぱり商売上手でした。

越前さんの訳

今後のクイーン関連どしどし出る話を聞きました。
越前さんによると、過去の翻訳は誤訳がかなりあるとのこと。そこを直していかれる様子。
また、国名シリーズの

オランダ靴の秘密 (角川文庫)

オランダ靴の秘密 (角川文庫)

こういう表紙をどう思われているか聞いたところ、それで1000冊多く売れるならいいとのこと。否定している人はもうすでに持っている人なんだから、それよりは新しい読者にとおっしゃってました。クイーン親子のほうは、エラリーがもっとタメ口でお父さんに話しているのではないかと思われて変えていらっしゃるそうです。生意気度があがっているエラリーはちょっと気になりました。

そんなこんなで楽しい時間はあっという間に終わってしまいました。
三時間もあったはずなのに!
またぜひ参加したいものです。