カエルほんのめも

ほんのめもです

横浜読書会スピンオフ第九回

横浜読書会スピンオフ第九回に行ってきましたー。
課題書は

あの夏、エデン・ロードで (新潮文庫)

あの夏、エデン・ロードで (新潮文庫)

以下、例にもれずネタバレ含む(今回はラストに触れるよ!)ので自己判断で読んでくださいねー。読もうと思っているかたは読まないように。

前回までのあらすじ

実は前回ギリギリまで頑張ったのですが、仕事でどうしてもどうしてもどうしても参加できず。課題書は

参加者のかたにクリスティラブなかたがいらっしゃるので、そのかたが熱く思いのたけを語ってくれたとか五匹の子豚が全解剖されたとか。それを受けてすっかりクリスティにはまっているかたがいらっしゃったり。聞きたかった!

今回の重大任務

さて、今回はいつも幹事をやってくださっているかたが遅れそうだということで、レジュメを預かるという重大任務を仰せつかっていました。
正直この本の何を語るの?と思ってましたが、そのレジュメの完成度ときたら。自分が流し読んでいた部分を拾い上げてくださっていて。
その他にもみんなの薦めるイヤミス一覧レジュメが。
人がどういうものをイヤミスと思うのかがわかって、なかなか楽しい一覧です。
そのため、絶対届けねば!という熱い気持ちで読書会の会場に。待ち合わせの30分前に(<どんだけ張り切っているんだ!)。
いつもレジュメを作ってくださるかたがた、ありがとうございます。幹事さん、いつもきちんと用意してくださってありがとうございます。
そんなこんなでレジュメに集中していたら、名札ケースを忘れた……うわーん。名札ケースの予備を用意してくださる名札ケース作成者さん、いつもありがとうございます。

さて、以下より本当に読書会開始です。
ネタバレ嫌なかたは絶対読まないように。

イヤミスとは?

読後感が嫌なミステリーのことだと思ってました。
が、今回みなさんと話して、イヤミスってなんなの?と議論に。
嫌だな〜と思うのはおおまかには精神的と肉体的に分かれているけど、その嫌だなと思うのは人それぞれぐらいは想像できてたんです。が、さらに現実にあったことだったら大丈夫な人がいたり、性的なものはダメな人がいたり。自分だったら何が嫌かなぁと改めて考えると奥が深い!
その中で今回の課題書には、わたしには嫌な部分がなく、ラストも嫌な気持ちにはならず、帯の「今年NO.1イヤミス」って絶対嘘だと思ってました。
みなさんの感想を聞いていくと、全部が嫌だったとおっしゃっていたかたもいらっしゃいました。子どもが酷い目に遭っているのを眺めることしかできない無力な感じが嫌だとおっしゃるかたもいらっしゃいました。ラストのグレースが救われない感じが嫌だとおっしゃっているかたも。カイルが結婚しているのが嫌だというかたも。こんな事件があって一人が落ちていっているのに、一人は平凡に幸せになっているのが嫌だという意見はわかります。ううう、自分の監禁シーンがこの程度なんてぬるい、という感想を沈めたい。

時代と地域

1976年にまったく思い入れがなく、アメリカ南部といえば暑いイメージしかないわたしにとってはホテルカリフォルニアも人種差別もトウモロコシ畑もあまりピンと来てませんでした。
けれど、今回1976年という年に対するアメリカ国民が感じている嫌なイメージや、明るいだけではないアメリカ南部という地域性、小説中に登場する『ワンダーウーマン』やドラノについてを説明してもらうと、この小説に対する見方がまったく変わってきました。
特に『ワンダーウーマン』に対するイメージ。アメリカの持つ勧善懲悪の象徴になっているなんてまったく思いついてなかったです。
この小説を読むのは1976年にノスタルジーを感じる人ではないかという話もわかるかも。時代を上手く小説に組み込んでいる上手い作家だという話を聞くと納得できました。翻訳物は歴史や地理を知るとさらに面白く読めるものが多く、学生時代にもっと勉強していればよかったなぁといつも反省します。
いつも名札を作ってくださるかたが、今回はどうしても全体的に青い空を入れたかったというようなことをおっしゃっていて、アメリカ南部のイメージにぴったりだと感じました。いつもありがとうございます。

カイルとグレース

兄妹の物語でぐっときたとおっしゃるかたやカイルだけの物語「カイルの夏休み」でないかとおっしゃるかた、カイルに子どもが持っていてもおかしくない正義感が欠落しているとおっしゃるかたがいたり。同じ主人公を読んでいるように思えないぐらい皆さんの感想がバラバラで議論が今までにないくらいヒートアップ!
カイルとは一体どんな少年なのか。
特別でない普通の少年ではないか、こうなるのも当たり前では、とおっしゃるかたもいらっしゃいました。
でも、何かできたはずでは、何か行動すればラストは変わっていたのではないかとおっしゃるかたも。
では、カイルだけが悪かったのかというと違うのではないかという話もありました。
カイルは作者の投影であってこの小説は私小説ではないか、本当に何かがあってあまり表に出てない(レジュメを作ってくださったかたがたがとにかく作家の情報がないことに驚いていらっしゃいました)のではないかと想像されていて、もしそれが本当ならイヤミスかもと思いました。

その他

読みやすかったという意見が多数。
その要因はやっぱり新潮の編集が読みやすい本作りを心掛けてくれているからではないか、この級数、この余白、この字並び、素晴らしいと絶賛していらっしゃるかたもいました。
あとは前半に登場する牛に対する意見。
牛が一番イキイキして書かれているのでは。牛、イイネ!という意見が多数でした。だから、後半にも登場してほしかったなぁ。

盛り上がりに欠ける読書会になるのではという当初のわたしの予想は大外れで、時間ぎりぎりまで『あの夏、エデンロードで』について語り合いました。
初めてのかたが引いていたのではないかと心配だ……
おかげでいつも盛り上がる次の読書会でやりたい本についてまとまらず(いや、これはいつものことか?)。次回は古典予定なのですが何になりますことやら。
参加されたみなさん、ありがとうございました。次回もぜひお会いしましょう!