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横浜読書会スピンオフ企画『燃える男』に行ってきました

大雨の中、横浜読書会スピンオフ企画『燃える男』に行ってきました。

燃える男 (集英社文庫)

燃える男 (集英社文庫)

今回はネタバレなくして語れないのですが、興味ある人のために途中まではネタバレなしで、途中からはネタバレありで書こうと思います。
この本はネタバレをされてしまうと残念なので、興味あって未読の方はぜひ途中で引き返してくださいね。
プレゼンターの方から参加者は重々いわれていたのですが、読まれる方はまったく前知識なく読まれた方がいいです。特に新潮社版のカバー後ろのあらすじには注意!

冒険小説とは

今回は参加者が十五人、時間もたっぷり三時間ということで、班に分かれることなく一人ずつ感想をいっていきました。
その前に今回のコーディネーターさんから冒険小説とはの解説があり、『世界の冒険小説総解説』と『冒険・スパイ小説ハンドブック』より抜粋したレジュメをいただきました。
わたしがさらに簡単に抜粋すると
「冒険小説とは、主人公が自分自身から不特定多数の他人にいたるまでの、人間の生命にかかわる、あるいはそれと同程度の危機に遭遇し、自らの力でその危機を克服していく過程を中心に描いた物語である」

とはいえ、冒険小説の定義はなかなか難しいというお話でした。
確かにアクション小説やハードボイルド小説と何が違うかといわれたら、わからないかも!?
特にジャンル分けの難しい昨今では、冒険の要素はどんな小説にもあると言われればあるなぁ。参加者の方が見つけてくださったのですが、歴代の日本冒険小説協会大賞受賞作を眺めると、宮部さんの『理由』が入っていたりするのもそういうことかも。

また、ちょくちょくスパイ小説との違いの話もありました。冒険小説は肉体派だけど、スパイ小説は知的な感じ?
その中でちょくちょく登場したのがグレイマンやルカレとの比較のお話。
ルカレが冗長的でジメジメなのに、クィネルはあっさりしているという話は興味深かったです。
オススメの冒険小説の話もありました。マクリーンとディック・フランシスとギャビン・ライアルは特にオススメとのことです。


さて、以下からネタバレありが始まります。
未読の方は絶対読まないように!

ネタバレ前に参加者の皆様にお礼を。
今回も楽しい読書会でした。幹事さん、コーディネーターさん、お店の手配をしてくださった方などなど、参加された皆さんありがとうございました。
以下からは本当にネタバレ始まります。

登場人物たち

カラオケ屋さんだったおかげでバックは『燃える男』が原作になった映画『Man On Fire』。このピンタ役の女の子はイメージぴったりで可愛かったです。
隣に座った方が持っていた集英社版のカバーは、今のものではなく多分ひとつ前のディンゼル・ワシントン主演の『マイ・ボディガード』のポスター写真。
ディンゼル・ワシントンと一緒に写っているダコタ・ファニングは明らかに子ども子どもで可愛いけど、ピンタのイメージとは違うと盛り上がってました。

ただ『Man On Fire』のクリーシィは元軍人だったそうだけど、筋肉が足りない気が。わたしは『LOST』の登場人物ジョン・ロックイメージだったんですが、賛否両論な感じ。もっと若いといわれたらそうかなぁ。
クリーシィ萌えなかたもいて、本からそれぞれイメージをしっかり持っているのかしら……と思ったら「登場人物で周囲の人は魅力的だったけれど、クリーシィのことがよくわからなかった」とおっしゃる方が。

クリーシィのどこが魅力ですか? 憧れる存在ですか?

と聞かれたら、確かに悩むところがあるかも!
昔の男という感じで、最近の子たちには受けないだろうなぁ。
なぜなら、最近の小説に多い「なぜかモテモテな僕」とはまったく違って「ストイックに努力を重ね、目的のためなら何でも捨てるクリーシィ」に憧れる子はイマドキいないだろうなぁと納得なのでした。
その点で、昔の高倉健のイメージというのも頷ける意見でした。

その一方で、他の登場人物が魅力的だから、その登場人物が大好きなクリーシィは好きになっていったという意見も納得。クリーシィは感情をあまり描かれず、強い男としての記号みたいなものかもしれないけれど、それでも記号以上に魅力を感じれるのは、クィネルの筆力かな。
「がんばれ、クリーシィ」のシーンは同じ気持ちになったという意見が多かったです。

他の登場人物で人気があったのは、リカ。
イタリア女性の強さが気持ちいいという意見がありました。
一方、ナディアは賛否両論。必要だったのかという意見があり、彼女も強い女性として描かれているという意見があり。
男性で人気があったのは、グィドーとサッタ。グィドーはまともでいいという話やサッタは魅力的という意見が多数ありました。

その他

『燃える男』は爽快感があったという意見も多かったです。
人がいっぱい死んでいくのにカラッとしているのは、舞台がイタリアのおかげ? クィネルの力? 翻訳者さんのおかげ?
クリーシィがピンタのおかげで心を開いていくシーンは丁寧に、その後の復讐シーンはユーモアを含んでいるけどさっぱりと書かれている。しかも、翻訳の表現がいいという意見が多かったです。大熊栄さんはクィネルの全作品を訳してますが、本当に幸福な出会いだったと思います。

『燃える男』はジョジョっぽいや赤穂浪士っぽいという意見もありました。わたしは思いつきもしなかったので、なるほどーと思ってました。
しかし、皆さん、ほぼ面白かったとおっしゃってました。
クィネルを次に読むなら

イローナの四人の父親 (新潮文庫)

イローナの四人の父親 (新潮文庫)

はオススメです。

他にもいろんな話をしたのですが、書ききれないので今回のレポートではこのへんで。