カエルほんのめも

ほんのめもです

翻訳シンジケートのコンベンション

翻訳シンジケートのコンベンションに参加しました。
会場は去年迷って大変な目に遭った鳳明館森川別館。
今年は無事に到着できてよかったよかった〜。
今年はスケジュールなどを見ると、なぜか閉じられた会に感じて心配してました(いやだって、一般人が参加しにくい!)が、やっぱり行くと楽しかったです♪
本の話でいっぱいって最高!
参加された皆さん、お話ししてくださったかたがた、計画してくださった事務局の皆さん、ありがとうございました。

七福神でふりかえる翻訳ミステリーこの一年

七福神である北上次郎さん、川出正樹さん、杉江松恋さんが三か月ごとに発売された翻訳ミステリーの中でお勧めの一冊を語るトークショーでした。

北上さんは『シャンタラム』『マイクロワールド』『鷲たちの盟約』『アンドロイドの夢の羊』について語ってましたが、一押しは『暗殺者グレイマン』。
『暗殺者グレイマン』の作者であるグリーニーがすごい、これからはグリーニーがアクション小説を切り開いていく、グリーニー世代の幕開けと熱く語られてました。
北上さんは自分がベスト1に押したものが文春などで11位に入らない。最近は20位にも入らない。なので、あまり参考にならないだろう。実際自分もわからないものが増えてきた。わかるものだけで生きていこうと思う。なので、今はグレイマンの面白さの研究をしたいと……やっぱりグリーニーのことかよ!

川出さんは『火焔の鎖』『粛清』『吊るされた女』『マッドアップル』について語られてました。一押しは『粛清』。
狭義のミステリではないけれど、とにかくいい。フィンランド文壇のレディ・ガガをぜひとのこと。
さらに『吊るされた女』の奇跡の復活を喜ばれてました。こちらの作品はシリーズ6作目で、翻訳読みは真面目に1から読むので読んでないかもしれない。でも、面白いのから読むので良いのだ、と力説されてました。
あとは、皆さん本屋さんへ行きましょう。本に呼ばれる体験をしましょうとのことでした。


杉江さんは『都市と都市』『殺人は殺人の現場』『森の奥へ』『失脚/巫女の死』『フリント船長がまだいい人だったころ』そして、『濡れた魚』について語られてました。
『濡れた魚』はダメ男の恋愛小説としても読め、主人公は恋愛部分のときだけ輝く。どんなか聞いてほしいと思って本を持ってきたのに、持ってきたのがなぜか下巻を二冊(知ってほしかったのは上巻のシーン)。かえって気になりました。もしやこれも作戦ですか?

以下は心の狭いミステリファンからの感想。
そんなとっても楽しいトークショーではあったのですが、わたしが気になったのは、皆さん「ミステリー要素がある小説なんです」とおっしゃって紹介されているとこ。
本当のジャンルは別の小説なんだけど……という小説を紹介されていて、確かに視野を広げるのはいいかもしれないけど。でも、今って翻訳ミステリだけでも追えないぐらい出版されてて、さらにその出版されている翻訳ミステリ自体が売れないという危機的状況では?
そんなときに実は違うジャンルをミステリーを求めている人に紹介するってどうなのかなぁと思いました。まー、マニアな集まりだからいいのかもしれないけれど。
わたしが危機意識を感じすぎなのかなぁ。

第4回翻訳ミステリー大賞リアルタイム開票&授賞式

候補作は
『解錠師』スティーヴ・ハミルトン/越前敏弥訳(早川書房
『罪悪』フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄進一訳(東京創元社
『湿地』アーナルデュル・インドリダソン/柳沢由実子訳(東京創元社
『毒の目覚め』S・J・ボルトン/法村里絵訳(東京創元社
『深い疵』ネレ・ノイハウス/酒寄進一訳(東京創元社
『無罪 INNOCENT』スコット・トゥロー/二宮磬訳(文藝春秋
まずは翻訳者のかたの挨拶から始まります。
そして、開票の仕方の説明。司会のかたも誰もまだ結果を知らないというドキドキの中、開票されていきます。
開票1票目は『無罪 INNOCENT』に。おおーとどよめきがおこります。
票はどんどん開けられ、ときどき投票理由が読まれていきます。
わたしはすべて読んでませんが今回『解錠師』が評判いいから、これかなぁとぼんやり見てました。

ところが、男性だけでなく女性の翻訳者さんからも『無罪 INNOCENT』にどんどん票が集まり、これはもう決定か、と皆が思っていたころ、じわじわと『毒の目覚め』が追い上げてきました。
そして、なんと『無罪 INNOCENT』『毒の目覚め』が10票ずつに! さらに気づけば『解錠師』も追い上げ9票。
そこから『無罪 INNOCENT』が先行するといっても、ダントツではなく2冊に追いつかれハラハラ。手に汗を握ります。

しかし、『無罪 INNOCENT』に一票。これで十五票。
最後に『無罪 INNOCENT』に一票。これで十六票。
そして、第四回翻訳ミステリー大賞は『無罪 INNOCENT』に決定しました。

賞状の用意が整う(本当にその場で賞状に名前が入ってました)まで、翻訳家田口さんが「ベテランの男性の翻訳で、精力剤のような作品」とコメントされてました。
そして、翻訳者さんと編集者さんに賞状、トロフィー、賞品(図書券5万円分)が渡されました。

翻訳の二宮さんと編集の永嶋さんから受賞の挨拶が。
二宮さんの挨拶を要約するこんな感じ。
同席したからには何かもらって帰ろうと思っていた。賞とは無縁とは思っていたが、今回、同業者から認めてもらえて嬉しい。でも、受賞はトゥロー氏がうまいから。私が翻訳で良かったところといえば、トゥロー氏と同年代なので理解できたところか。

編集の永嶋さんの挨拶を要約するとこんな感じ。
サビッチはひどい奴だといわれている。
しかし、前作の『推定無罪』のサビッチは今ちょうど同年代、読んでいて気持ちが理解できた。なので今回の『無罪 INNOCENT』を読み、アラカンになるとこうなるのかと思っている。

とっても笑いに満ちた授賞式でした。

さらに今回は読者賞も設立。
司会のかたが「候補作を絞らず、発売日だけ決めて自由に投票してもらった結果大変なことに!」とおっしゃってました。
いきなり4〜8位の発表。
第四回翻訳ミステリー大賞をとった『無罪 INNOCENT』が6位、1位を競った『毒の目覚め』が5位と意外な展開。

そして、1〜3位の発表!
と思っていたら、なんと同点で『深い疵』『吊るされた女』『解錠師』が1位でした。確かに大変な結果です!

そのため、賞品として用意されていた《猟奇の鉄人》kashibaさんの古本福袋は急遽和・洋・翻訳と3袋用意されることに。
内容を説明してくださったのですが、めちゃくちゃ豪華!
現在の取引価格だけでなく、ご自分の購入価格を自慢げに話される姿に思わず笑ってしまいました。「いらない本はこの場でオークションされてください」とおっしゃってましたが、結局なかったなぁ、残念!

それぞれの翻訳家のかた(『吊るされた女』の務台さんは次の作品を翻訳中のため来られなかったそう)の挨拶がありました。
『深い疵』酒寄さんは読者の賞をもらえて嬉しい、一生モノの賞だとのこと。
『吊るされた女』については司会のかたが先ほどのトークショーで川出さんが読んでほしいとおっしゃっていたが実は読者は読んでいたと説明されたのが印象的。
『解錠師』越前さんはこの作品はいくつか賞をいただいてますが、一番嬉しい。何より嬉しいのは読書会立ち上げのときから見ていて、ついにこういう賞ができたことが嬉しいとおっしゃってました。

そして、各地の読書会について、それぞれの計画者さんたちから一言。
名古屋は5月18日に計画中。※修正しました。すみません!
横浜は5月にスピンオフでピクニック読書会を計画中。
札幌は5月18日に『推定無罪』で読書会だそうです。今回の『無罪 INNOCENT』の受賞は風が吹いているみたいと喜ばれてました。
西東京は新しいもの中心に行っているそう。7月に三鷹の古本屋でお茶が飲めるところで予定されているそう。
埼玉は6月に予定。親父本・野郎本をとのこと。
千葉は7月に『コリーニ事件』を。
福岡は特に予定はおっしゃってませんでしたが、いつも楽しいいろんな意見が出るのでぜひ、と。

夕飯

ここで大盛り上がりの第一部は終了。
夕飯を食べてきてくださいとのことだったので、横浜読書会のメンバーたちとインドカレーを食べに行きました。

適当に入った店でしたが、大人数だと離れた個室のような店で素晴らしい。さらにチキンセットにしたら、拳ほどのチキンがゴロンゴロン。さらにカレーとナンにマンゴーラッシー。凄い量です。さすが学生の街!
美味しいとすっかり綺麗に食べてしまいましたが、それがそのあとの悲劇を生むとはまだ誰も知らないのでした……

ここでも本やマンガの話題ばかり。
みんなでああでもないこうでもないと話しているとあっというまで気づけば、そろそろヤバい時間!
さらに会場までこっちか? あっちか? とやりながらなため、バタバタしてしまいました。あわあわ。
おいていくような展開にしてしまってごめんなさい!

出版社対抗ビブリオバトル

文藝春秋東京創元社早川書房・扶桑社の四社の編集さんがこれから発売予定の一押し作品について語ってくださいました。

文藝春秋は7月10日発売予定『クラッシャーズ』。
一番手ということで勝手わからず丁寧に、とにかく一般の人に受ける本を探して見つかったということを話していたら「あと30秒」の合図が!
慌ててしどろもどろになってしまわれた編集さんを憐れんで、急遽持ち時間が五分に延長。それに慌てる別の出版社編集とバタバタ。キャラが立っていて、お仕事小説としてもオススメの一冊だそうです。バカミスかバカかの議論もできるそうです。

早川は7月上旬発売予定『ウィリアム・ランディ』。
今までの作品とは一味違う作品で、父と子をテーマにした法廷ミステリとのこと。
田口さんが質問で、自分が訳している『ALL CRY CHAOS』も発売を控えているのに、なぜ『ウィリアム・ランディ』かと詰め寄るところが面白かったです。

扶桑社は5月2日発売予定『予期せぬ結末1 ミッドナイト・ブルー』。
井上雅彦さん編集の短編集とのこと。
早川の宣伝を受けて「この短編集には田口先生の訳された作品が二編も入ってます!」とおっしゃっていたのが、商売上手だなぁと思いました。700円と他の出版社では書かれてない価格もアピールされていて素晴らしかったです。
なのに、質問はリチャード・ニーリィ『リッジウェルの女』に集中。翻訳者さんの名前も明かされ、7月か8月に出る予定ではあるそうです。ただ、予定と強調されてましたが。

東京創元社は7月発売予定『アーサー王墓所の夢(仮)』。
イラスト付きで、覚えておく必要のある登場人物の説明やこのシリーズの説明、12世紀の説明などをしてくださりました。
主人公アデリアはももクロで例えると誰?の質問も綺麗に躱してました。歴史ミステリ苦手なかたにもお薦めだそうです。

このあと、みんなの一番読みたい本を挙手で決定。
扶桑社『予期せぬ結末1 ミッドナイト・ブルー』が32票を集め選ばれてました。パチパチパチ。

今後、もし可能なら「今後発売予定の読書会向き一押し作品」を語ってもらって、投票してもらって一位の作品を各地の読書会でやるとかやってほしいな〜と思いました。
そしたら確実に百冊ぐらいは売れるのにな。

ミステリー・クイズ大会

杉江さんの司会の元、今回も行われました。
今回は夜中でなくかなりの人数がいたために、グループ分けがかなり適当。さらに問題もエキサイトくんのみ11問。後ろの席だったため、最初は問題が見えず、手を挙げるのが早いチームが有利で、かなり残念でした。
まったく知らない人たちとお話しできるきっかけであった去年のほうが楽しかったなぁ。

と文句を言っているのですが、わたしは横浜メンバーとはぐれ、別のテーブルにお邪魔させていただいたため、新しいかたと楽しくおしゃべりしてました。
とある読書会の世話人さんともお話しして、最近の悩み「読書会に何度も参加してもいいのか」をきいてもらってました。新規の読者獲得の意味もあるだろうなぁと思うと、席の限られた読書会はなかなか参加しにくくって。新しい人に行ってもらったほうがいいかなと悩んでいたんです。
「一般の人が参加することに意義があるから気にしなくていいですよ」と優しくいってもらえました。これからはあまり悩まずに、参加したい本のときは参加できたらな〜と思います。

さらに後ろの席のためか、お菓子がどっさり。
食べても食べても追加がやってきます。はー、幸せ♪
と美味しくもぐもぐいただいていたのが、このあとのさらなる悲劇を生むことになるとは。

第三部小部屋企画「翻訳ミステリィ執事カッフェ〈ナゾー〉」

去年より行く部屋が減って、特に読書会がなくなってがっかりだよ!とかいっていた小部屋企画。とはいえ、どこにまず行くかと悩んでいたはずが、甘いものを食べたからコーヒーを飲みたいよねとそれだけで執事カッフェに行くことに。
ミ、ミステリーのイベントに来たのに!

用意が整わないので〜としばし並んでました。
このときにようやく執事さんに相談する悩みをどうするか悩み始めました。いや、だって今は探している本もないし、翻訳は未知なる世界すぎてよくわからないのですよね。
ああだ、こうだと言っていたら開場です。
まずはテーブルへ。しばし待たされてからフットマンが案内に来てくださいました。フットマンがいるなんてかなり本格的です。

テーブルにはメニューと執事を待つあいだのクイズ、そして、個性的な執事三人のイラスト入り説明が。

かなり可愛い!
一緒のテーブルになったかたがフットマンを指導されているのを楽しく眺めつつ、メニューを決定。コーヒーにしました。
すると、多分翻訳ミステリー編集の中でイケメンと噂の永嶋さんがコーヒーをおとしてくださっている気配が。い、いいのかしら!? その時間をもっとミステリーに使ったほうがいいのでは? と勝手に心配してました。

コーヒーを待つあいだにフットマンが「お嬢様、お菓子はいかがですか?」と声をかけてきました。別のテーブルを見ると、とっても美味しそうな焼き菓子が。
でも、さっきから食べ続けているため、一つも食べれない〜涙。
泣きながら我慢しました。こんなことなら、ご飯を控えるべきだった!

執事席では執事さんが悩みに悩んでいる姿が。
この質問はどうすればいいんだろうとおっしゃっていました。どんな質問なのかしら〜? と興味を持っていたら、執事登場。わたしの質問に川出執事が答えてくださいました。
わたしの質問は「日本の新本格好きに薦める海外現代ミステリーを紹介してください」としました。

百番目の男 (文春文庫): ジャック カーリイ
かくてアドニスは殺された (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1441): サラ・ コードウェル

を薦めてくださいました。が、その場に一緒にいた横浜メンバーの変わったミステリをお好きなかたが「わたしが気になっている本です」とおっしゃっていて、不安な気持ちに。この二冊は本当に新本格っぽいんでしょうか〜?

友人たちは『終わりの感覚』を薦められていたりしました。そんなに良い本?
次回はもっと質問を練っていくべきだと思いました。

第三部小部屋企画 恒例! コージー・ミステリーのお部屋

執事カッフェでコージー部屋が凄いといわれたので、コージー部屋に。ここでもお菓子がたっぷり。
うわー、夢の世界!
でも、さっきから食べ(以下同文)
そんなことをいいながらも、クッキーをいただき、チーズをいただき。幸せになりながら、読書会ですべきコージーミステリーを相談してました。ハンナ好きなわたしとしては、上條さんに相談に乗ってもらえるなんて夢のよう。

どうすべきか、と真剣に話していたら参加者のかたもアドバイスを。ローズが主人公で、タイトルが容疑者の〜とかクリスマスの〜とかいうやつがお薦めだと教えていただきました。
ツッコミの多そうなコージーミステリーではありますが、ミステリーとして話どころもあると思うので、ぜひ一度やりたいなぁ。

第三部小部屋企画 全国からあつまろう読書会の輪!のお部屋

時間がなくなってきたので、読書会の部屋へ。
金沢読書会を立ち上げたかたがいたり、南東京読書会が立ち上がることになっていたり、企画が盛り上がってました。

そんな中、わたしはキングマニアのかたのキングの映画のお話を聞くことができました。
気づいてなかった映画と小説の違いから、新たな魅力を解説していただいて、目からウロコ状態。マニアのかたの視線って本当にすごいな〜と思いました。
もっと聞きたかったんですが、時間が迫っていたのでラストの部屋に。

第三部小部屋企画 紫煙と酒のハードボイルド雑談部屋

ハードボイルドって良さがあまりわからない人間が行っていいのかな〜と思いながらも、参加させていただきました。ちょうど田口さんの隣に座らせていただきました。

何やら熱い議論の最中でいいのかな〜と思っていたら「ウサギ肉いかがですか?」とパテがパンに塗られたお皿が。でも、さっきか(以下同文)
そのお皿を持ってきてくださったかたが、田口さんに「『無罪』についていいたいことがあるんです!」と詰め寄ってこられて、びっくり。目を丸くしていたら、サビッチがダメンズ以下であると語り始めました。
まだ読んでないのでそうなのか〜と聞いていたら、田口さんも反論開始。小説の登場人物がダメンズかどうかをあんなに熱く語る場はないと思います!

とっても楽しい議論をもっと聞いていたかったのですが、そこでタイムアップ。あ〜、もっと皆さんと話したかったよ〜。
後ろ髪を引かれる思いで腰を上げました。
とっても楽しかったです。
本をもっと読んで、もっと話したいと思いました。また来年参加したいものです。

終わりに

以上で楽しかった翻訳シンジケートのコンベンション感想を終わります。本当はもっと書きたいことがあったのですが、書ききれなかった〜。気になったかたはぜひ次回参加されるといいと思います。
もし、何か間違いなどありましたら教えてくださいね。
では、最後まで拙い感想を読んでくださってありがとうございました。