カエルほんのめも

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横浜読書会スピンオフ『シンデレラの罠』

横浜読書会スピンオフ『シンデレラの罠』に行ってきましたー。

シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)

シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)

今回は行けるかかなり微妙なところだったんですが、強行突破で行けて良かったです。参加された皆様のおかげで今回も楽しい読書会でした。ありがとうございました。
そして、いつも名札と名札ケース製作者さん、ありがとうございます。名札は、今回の課題書の登場人物名前最初の文字にポイントがあるということで、皆さんの最初の文字がカッコ書きで書かれてました。ミとドのかたがいて盛り上がりました。

というわけで、以下からがっつりネタバレありの読書会感想です。
ネタバレされたくない人は読み止めてくださいね。特に今回はネタバレしないとそもそも書けないのでネタバレしますよ。

今回の読書会は

今回は参加者が12名ということで、2テーブルに分かれることに。グーとパーで分かれ、ある程度話したところで再びグーとパーで分かれました。
そのため、まったく話せなかったかたも。
うー、どんな感想を持たれていたか気になるなー。お話しできなかったかたたちも同じように思ってくださっているかも!?
というわけで、今回はわたしの感想視点で読書会の流れをお伝えしようと思います。うーん、上手く行くかしら?
というわけでネタバレを本気でします。

最初の感想

帯に書かれていた宣伝文句と冒頭を読んだあたりで「あー、この子がどっちかわからなくなるんだろうなー。でも、まあ王道として最初疑われた子じゃないほうの子なんだろうな」と読めてしまいました。
こんなふうに読めちゃうなら、この帯、まずいんじゃないの?
と思いながら、読み進めました。

先はわかっているとはいえ、興味深く読みました。
わたしの興味としては最後の着地点がどうなるかということだけでしたが、わたしには綺麗な終わりは思いつかず。そうこうするうちにラストのシンデレラの罠。
あー、なるほど。
シンデレラの罠といえば、お姉さんの足を切ってガラスの靴に入れるけど鳥に明かされて正体がばれてしまうところを思い出しました。やけどを負ってまでシンデレラ(ド)になろうとしたミだけど、失敗してミに戻るのと一緒だなー。やっぱりこれはミなんだろうな、なるほどねーと納得しました。なかなか上手いミステリだったな。満足満足。
そして、訳者のあとがきを読み驚愕しました。

これを書いたらダメだろう!
こんな地の文もセリフも区別のない小説で、地の文に見える部分を疑わせたら、この小説って読む意味ないよ? すべては作者の妄想になるよ? そんなのってどうなの?
このあとがき、もしかして帯の宣伝文句に引っ張られているんじゃないかなー。単純に読めばいいのに。この宣伝文句とあとがき、いらない気がするなー。

あやふやにするべき?

読書会で驚いたのが、難しかったとおっしゃっていたかたがいたこと。
さらに、驚いたのがミではなくドに引っくり返す何かを誰か見つけてくれないかとおっしゃっているかたがいたこと。
なぜに単純に読まれてないのかしら???
こんなに単純なミステリーなのに。

でも、サインの件やシンデレラの罠をミしか知らなかった件など、一つずつ当たっていくと確かにあやふやな感じになっちゃうかも。翻訳のせいか、原文からそうなのか。フランス語ができるかたに教えてほしい!
旧訳を読めばいいのか、という話になったのですが、旧訳を読んだかたは読みにくくてわけがわからなかったとのこと。真相掴めず、残念な限り。

消えたラ

すっごく深読みして読まれていたかたがいらっしゃいました。
アナグラムになっているかも? ここは伏線? と本に付箋がいっぱい。登場していた先生たちにも何か意味があるのかと。でも、たどっても何もなく、ただ登場しただけというものだらけということでした。

その大きなものが冒頭に登場したラ。
登場してすぐに消えてしまったラが再び登場することを期待していたかたもいらっしゃったんですが、結局登場せず。記憶喪失の彼女はラだったのでは?なんていう説も飛び出しましたが、ないだろうなぁ。
上手くやるならラを登場させて、さらにあやふやにしても良かったのに。

そういうことを聞いていると、きっちり書かれてない気がしてきました。
実は行き当たりばったりの小説なのでは?

作者はどっちか決めてた?

そもそも作者はミとドのどっちか決めてたのか、という話になりました。
決めてなくあやふやなものを読ませる小説にしたというなら、そんなの推理小説じゃない!と一人怒るわたし。
作者は何を書きたかったの?

レジュメを作ってくださったかたの調べてくださったセバスチアン・ジャプリゾのことを信じるなら、経済的事情から推理小説家に転身することとなり、借金の支払いのために2つのミステリ長編をわずか一カ月で書き上げたとのこと。いきなりの推理小説家転身、書き上げるまでに一カ月……これは精密な推理小説なんて書けるわけがない!
絶対雰囲気で推理小説を書き、上手く処理できなかったところも残したままで出版したら、その上手く処理できなかったことにみんなが惑わされた、というのが正解な気がします。

だからって下手で読めない小説というわけではなく、曖昧な部分が良いバランスで入っていて絶妙な小説だとおっしゃっていたかたがいましたが、その通りだと思います。

シンデレラの罠

さて、シンデレラの罠ですが、わたしの解釈をいったところ「それは違いますよ」と教えていただけました。
原題『Piege pour Cendrillon』のpourは誘惑するという意味なので、シンデレラを誘惑する罠という意味だと教えていただきました。なるほど。

それでも、ド(シンデレラ)を誘惑するミの罠で別にいいのでは?
と思ってましたが、ミの罠にかかったド(シンデレラ)と解釈すればドでいいのでは?という意見も。そのため、最後まで記憶喪失はドだという意見のかたもいらっしゃいました。
それはどちらも成り立つなぁとは思います。

小泉喜美子さんは素晴らしい

そこで参加者のかたが「小泉さんの言葉が当たっているのかも」とおっしゃいました。みんなで訳者のあとがきに翻訳家であり、作家の小泉喜美子さんの言葉に注目しました。
ああ、なるほどー。
面白さはやはり文章や雰囲気で、ミステリ部分の曖昧さはしかたないしかたない(要約)というのにまったく同意です。さすが小泉さん、素晴らしいまとめ!

わたしの結論としては『シンデレラの罠』は推理部分は穴も多いけど、小説としてはきちんとまとまっているし、さらっとエンターテイメントとして読むなら面白い小説。ウダウダ悩みたい人には悩ませてあげられるだけの力も持っているけど、答えはなく永遠と悩んでいれると思いますー。
その点では、誰もがハッピーですね!

その他

同性愛の雰囲気だとかフランスっぽい小説だったという話や、ミドラ伯母さんやジャンヌについて話しました。1962年に出版された小説なのに古臭くないという意見も。こういう小説、日本にはないよねーという話になったので、すかさず横溝の名前をだしておきました。横溝もすごい!

以上、楽しい読書会でした。
参加された皆さん、ありがとうございましたー。